た んぺん堂(骸ツナ、ツナ受中心サイト・ムクロウや箱獣が好き)



どこにおくべきか分からない

■ リボーンツナ受&保健室の死神アシタバ受 コラボしてほしいんだよSS


「あああ……なんでマフィアの皆は、引っ越してこようとするんだろう、中学に? もしかして、ありとあらゆる学区のありとあらゆる中学に、マフィアの皆が いたりしたらどうしよう……」

 ツナが憂鬱そうにこぼすそばから、獄寺が「当然っすよ!」と嬉しげに高らかに叫ぶ。

「皆、10代目のお顔を一目でも拝顔したくてうずうずしてるんすよ! すぐそばにいられる右腕のオレなんかとは立場が違いますからね!」

 フォローになっていないフォローである。おそらく彼が言いたいのは右腕のオレ。
 そこにつきるのだろう。

「むしろオレとしてはプロマイドで我慢しろって感じっすかね!」
「獄寺君、本当に怖いから止めて」
「ははは、オレが野球で戦う中学とかの中にもマフィアとかいたら、面白いな」
「面白くないよ! だったら野球部の山本の試合も応援しに行くの怖くなってくるよ」

 とツナが言うと、すぐに「ああ、いねえ、いねえ、冗談だって」と山本がツナの背中を叩く。
 獄寺の方は逆で「いるっす、全員、マフィアっす!」と太鼓判を押す。

「今度戦うのってどこ?」
「ああ、今度は常伏中ってとこだよ。こっちにきてくれるみてーだな」
「ふうん……」
「変な名前の学校だな」と獄寺はせせら笑うが並盛だって十分変な名前なのを海外育ちだから分かっていないのだ。

「びっくりするだろうな」

 リーゼントの連中に囲まれるのだ。
 他校からやってきた人々は全員、自分の正気を疑う事になる。

           ★         ★           ★


「並盛かあ、小盛とか大盛もあんのかね」

 と調子に乗った事を言うのは美作だ。
 彼が野球部に入っていた時の友人に誘われて野球部の応援に行く。
 もっとも彼の場合は他校でならナンパもうまくいくのではないかという目論見があるようだ。
 何しろ当人がそう主張していた。
「時代は他校だ!」と。
「お前は餌に最適だ、藤!」と藤が抜擢されてきている。
 藤のつきそいがアシタバだ。
 なぜか知らないが藤はアシタバに懐いている。
「お前が来れば藤も来る」と連れてこられた。
 アシタバの横で藤は「なあ、家からくすねてきたんだ。菓子食うか菓子、お前のそれと交換しようぜ」とアシタバに持ちかけてくる。
 色気より食い気。
 やる気より眠気の中身の8割がナマケモノで構成されている王子の台詞である。

「ああ……も、もう少しで並盛だね! よかった! やった! 僕は迷子にならず生徒を誘導できましたよ! 三途川先生!!」

 頼りなさ溢れる独り言をもらして感動中のハデス。
 保健室で話していたら、彼も勝手についてきた。
「いぬまるだしっ」なら「いい先生というより変人レベル」である。

「アシタバ君もわくわくする?」

 と、このハデスもアシタバに懐いてくれている。変な男しかアシタバに懐かない。

「そうですね、何が起きるか今から心配です」
「安心しろよ俺がいてやるから」

 と藤が言うが、藤もだいたい、騒動に一役買わずとも協調性とアシタバへの丸投げ率の高さで、不安要素の一つだ。

(僕の友達や先生っていい人だけど皆濃いよなあ。並盛で目立っちゃったらどうしよう)

                       ★      ★      ★


「さあここから先に入ったら僕の規律に従って貰うよ!!」

 お客さんといえども並盛の秩序マシーン、雲雀恭弥の間の手を逃れる事はできない。
 しかし、だいたいどの学校でも野球部というのは規律正しい。観客としてやってきた常伏の生徒たちも同様だった。リーゼント集団という毒気を抜かれる存在 もいるわけで、全員、言われるままに携帯を預けて襟を正す。

(うーん、さすがだなあ、雲雀さん)

 ツナはいつもながら感心した。

「めんどくせーな」

 ツナは即座にそのひやっとする発言をした恐るべき少年の方を見た。そして見とれた。
 色素の薄い髪の毛、貴族的な面立ち。
 若かりし頃のディーノはかくあらんという美貌。
 周囲にきゃーきゃー騒ぐ女子の輪ができている。

「わあ……かっこいい子だなあ」

 この台詞で、時雨金時を抜いて助けに行きかけていた山本の脚が止まった。少し妬心を煽られたのだ。
 獄寺などは露骨に「やれ! やっちまえ雲雀! ぼこぼこにしちまえ!」と叫んでいる。少し我慢を覚えた方がいい。
 彼らは、命を助けてしまったツナに執着している。

「何言ってんの獄寺君! あの子、危険だ助けないと!」
 
 しかし、その無敵の雲雀のトンファをその子はすっと体をよろけさせるようにして避けたのだ。並外れた運動神経だった。

「ワオ」

 雲雀が面白そうにした。強いものは好きなのだ。

「あの子、すごい!」

 ツナが叫ぶのとその少年に誰か別の少年が駆け寄るのが同時だった。
 おどおど、ぺこぺこと頭を下げる。

「ごめんなさい、ごめんなさい、すみません、藤君には僕がよく言って聞かせますから許してあげて下さい」

 その少年のびくびく態度にツナは(あ、なんかオレみたいだ……)と連帯感を抱く。
 特に日常、獄寺といる時はこの役回りに回りがちである。

「謝ることねーよ。めんどくせーって感想言っただけじゃねーか。そのくらいでキレるなんて、こいつがおかしーんだ。山蔵でも、もう少し気が長えぞ」
「それ誰? 知らないけどかみ殺すよ」

 と、雲雀の額にペタンと大きな手がかざされた。
 大人だ。やけに背が高く、よく見ると美形だが、顔中にヒビが入っている。

                 ★     ★     ★

「捕食完了……」
「あのうあのう、他校の生徒を食べちゃっていいんでしょうか、というか、何の病魔だったんですか?」

 アシタバは倒れ伏した風紀委員長を前にかなりおろおろしている。
 これで不祥事になったらどうしようとハデスの身の上の心配までしている。

「闘争心の病魔だよ。久しぶりに軽く食べられたな」
「でもあんた顔変わってるぞ」

 と美作が眉をしかめる。美形が嫌いなのだ。
 ヒビがとれたハデスは単なるハンサムに見える。白い髪の毛も黒くなり眉もできていた。

「本当かい?」
「本当ですよハデス先生、またかっこよくなってます」

 アシタバも同意した。

「いやあ、照れるなあ」

 照れている場合なのだろうか、これは暴力事件になるのでは……、とアシタバは気が気でない。

「うわー、雲雀さん、雲雀さーーん!!」

 と少年がリーゼントをかきわけてやってくるのに「あっ」と驚く。
 この風紀委員の身内だろうか。

「あのっ、雲雀さんに何をしたんですか?」

 きっと、ハデスを睨む。

「ああ、心配ないよ、病魔を食べただけだから」
「貴方マフィアですか?」
「まっ、マフィア? 僕はただの保健室の先生だよ。普通の人だよ」
「いや普通じゃねーだろ」

 と藤がすかさずツッコミを入れる。
 そこはアシタバもフォローできない。

「あの、先生は病魔を食べる力があるんです」
「病魔あ? 何言ってんだか、わかんねーな! うちのもんに手出しやがって! このオレは10代目の右腕にしてもっとも信頼する相手獄寺隼人! そのオレ の力を」

 懐をがさごそし始めたので、ナイフでも出すのかとアシタバは緊張した。
 出てきたのがダイナマイトだったので、倒れそうになった。

「おや、ここにも病魔が」

 さっとハデスが手をかざすと、その獄寺隼人もぶっ倒れる。

「ごっ、獄寺君!! オレの仲間に何するんだよ!」
「いや彼にはストーカーという病魔がついていたので食べただけだよ?」

 というわけで、ハデスと茶色の髪の少年ツナ、後からやってきた黒髪の大学生にしか見えない山本、その間に入ってアシタバは説明を繰り広げた。

「というわけで先生は病魔を食べる事ができるんです」
「なるほどなのなー」
「でっ、でも、雲雀さんも獄寺君もぴくりとも動かないんだけど! これ治った状態って言えるの?」
「雲雀や獄寺の根本の部分になってるのかもしれねーな。このままにしておくと死ぬのかもなー」
「そっ、そんなのだめだよ!! 返して! 返して下さい、その病魔!!」

 ほとんど泣きそうな顔になっているツナの横で、山本と呼ばれた青年が真剣を抜いている。
 悲鳴をあげてアシタバはハデスを仰ぎ見た。美作もおろおろしている。

「えええっ、そ、そんな事できんのか先生」
「さあ、食べた物を吐き戻した事ってないから……」
「でもやるしかねーだろ。あんた生徒殺したら、もう先生やめねーといけねーぞ。俺はどこでさぼったりアシタバと会えばいいんだよ」

 自分の事しか考えていない藤がやたらと潔い。

「とにかく戻して下さい、がんばってハデス先生きっとできます。おえって!」
「ええええええ」

 かくて。
 アシタバは強引に吐かされてぐったりしているハデスを支えるようにして、並盛から常伏に帰る事になる。
 
「お前ばっかアシタバに頼ってんじゃねーよ。アシタバ、次俺だ、俺」

 せんべいをかじりながら、藤はあいかわらず容赦なくマイペースだ。

「お前はちょっとは手伝えよ!」

 と美作が怒っている。

(あああ。でも……なんか、あの子、大変そうだったな)

 それが今のアシタバの心の慰めである。自分の周囲は濃いと思っていたが、暴力風紀委員長とストーカー、それにリーゼント集団と真剣を持っている野球少年 は、アシタバの人生にはいない。
 しかもマフィアのボスなどと電波な事を言っていた。当人もちょっとおかしいのかもしれないが。
 
(僕は藤君とハデス先生だけだから、まだ楽ちんだ。そう思おう。そう思って生きていくことにしよう)

「美っちゃん、どこ行ってたの? 僕が知らないうちにどこへ?」

(そうでもないな)とアシタバは認識を改めた。

                 ★    ★    ★


「変な奴らだったね、まあ出て行ったからいいけど」

 雲雀が追撃しなかったのは、ハデスが文字通り戻した病魔(闘争心)が少なかったせいだろう。
「そのうちまた増殖するから、きっと」とハデスは言い訳していた。
 この後、獄寺の方も、ツナを家の前で待ち伏せするという行事を一週間ほど行わなかった。
 一週間のうちに病魔がまた復活してしまったらしく、それからはまた元の獄寺に戻っていたが。

(病魔かあ……でもオレは病魔な皆でいいや)

 とツナはまたすっかりストーカーに逆戻りした獄寺に手を振って別れながら思う。
 昔はこの生活に順応できなかったが、今は違う。
 マフィアな皆はちょっとアレでアレだが、楽しい。

(あの子、大変そうだったなあ。変人だらけでも巻きこまれるのに慣れるまでが大変なんだよねえ)

「どうかしましたか沢田綱吉」

 ばさっと近くの家の塀に、白フクロウが舞い降りた。
 中身が入っているのが赤と青の目でよく分かる。

「……お前、まるごと食べられるところだったんだぞ。良かったな、今日学校来なくて」
「何ですかそれは」

 絶対全て丸ごと食われた事だろう。色々病魔がついていそうだし、そうなると骸は水牢の中で溶けてしまうかもしれない。
 ほっそりするムクロウを撫でると「ぶしつけな!」と言われたが、特に逃げようともしなかった。

【完】