た んぺん堂(骸ツナ、ツナ受中心サイト・ムクロウや箱獣が好き)


リボドラからやってみた
 獄ツナで骸ツナだけど、とくに考えなくても読める

■ この世界は宇宙と交わっています。


 六道骸は前半生、頑張ってきた。
 前世も頑張ってきた。
 つもりである。
 だが、今は、部屋でごろごろしていたかった。
 沢田綱吉の命令がない限り、ムクロウになろうともクロームになろうとも動かないぞという態度。
 最近は彼の興味を惹くものがないという最大の問題がそこにある。

「くふーテレビもいい物やってませんねー。huluはどうでしょうか」

 ダメ人間としての態度をあらわにして、彼はテレビを見ていた。
 無断で廃墟に住んでいる割には簡単に契約してテレビを見る事ができるようになった。
 それも、骸のぐだぐだ生活に拍車をかけていた。

「!」
「あ、骸いたー! よかったー!!」
「沢田綱吉!」

 骸は慌ててチョコレートの袋をソファの隙間に隠した。
 エロ本を隠す中高生と同じくらい、だらだら生活が恥ずかしかったのである。
 それならば仲間たちと一緒に買い出しくらい行けばいいものを。

「何の用ですか? 僕は今瞑想していたのですが……」
「あ、そう……」

 ツナはもちろん、骸がチョコを貪り食っているのが超直感で分かった。
 いや超直感がなくても分かっただろうが、指摘しなかったのはツナの優しさだった。
 わざとらしく髪の毛をかきあげているこの男が面倒くさい人間なのは知っている。

「あのさ、コンビニのバイトを手伝ってくれない?」
「コンビニのバイトですか……ほう、この僕に手伝えと……」

 そのまま、オウム返しにする骸。
 実は彼は動揺していた。それは「やった! 嬉しい!」という動揺である。
 正直、彼は制服が好きだ。大好きだ。
 学校の制服は至高だと思っている。
 しかし、コンビニなどの服を着た事はない。
 なぜなら骸には戸籍がなく、クローム以外の残りの皆にもなく、まともな職業にはつけなかったからである。

「つまり制服ですね?」
「うん制服だよ」

 よかった、とツナは思う。骸の制服好きはツナも良く知るところである。
 そわそわしている骸が、少し可愛いなと思う。

「何を笑っているんですか」
「あ、別に笑ってないよ。ほんと、困ってて。手伝ってくれる人、探してたんだ。ありがとう」
「別にかまいません。瞑想以外は暇ですから」

 ツナに感謝されるのも嬉しかったが、ツナがコンビニの制服を着て隣に立ってくれるのだと思うと、夢気分の骸だった。
 彼はツナが好きだった。
 しかし、世界はあまり骸に優しくなかった。

「……10代目が手伝って下さるものかと……」

 ずうん、と音を立てて落ち込んでいる獄寺にも優しくなかった。

「何で沢田綱吉じゃないんですか……」

 同じ落ち込み方をしている骸。

「詐欺ですよ!! 制服詐欺ですよ! これはもう帰るしか!」
「待て」

 フクロウになって飛ぼうとする骸の足をがしっと獄寺が掴む。
 すばやい。

「何するんですかあ!」
「店内動物持ち込み禁止不可だ! それと、マジで昼の1人勤務やべーんだ、これから品出ししなきゃだし、近くの会社のOLやら工事のおっさんやら、すげー混むんだよ」
「沢田綱吉!!」
「あの、骸も獄寺君もなんか、ごめんね……だけど俺、これから、会議出ろってリボーンに言われててさ。ほんと、俺もバイトの方がどんだけいいか……バイトなら金は出るし……」

 どよん、と、ツナも落ち込み始めた。

「10代目……」
「沢田綱吉……」

 おいたわしいという顔になる右腕(自称)。
 鳥から人に戻る骸。こちらもばつが悪そうだ。

「そーだ! 骸! お前変身できるだろ、10代目の代わりに出たらどーだ」
「変身じゃありません、幻覚です。沢田綱吉の同席なしで醜いマフィアを全員殺さない自信がありません」

 それに、と骸は思うのだ。
 ここでツナに恩を売るのもいいが、そうなるとおそらくツナは獄寺と二人でバイトになる。
 獄寺は楽しいだろうが、骸としては、割を食った思いになる。

「醜いマフィアの争いに行くよりは、僕もこっちの方がましですね」
「うん、とにかく、助かるよ、頑張って骸」
「後で君がチョコケーキを僕に奢るんですよ」
「分かったよー」
「10代目! いってらっしゃい!!」

 かくして骸と獄寺、2人が残された。
 骸はコンビニの制服にさっそく着替えた。

「お前には後で俺が金をやる。お前は店長ってことになってるからな」
「代理出勤ですか」
「腰を痛めちまってよ。悪い人じゃねーんだよ。本社からなんか言われたらかわいそうだろ」
「やれやれ。君も、お人よしですね」

 ツナのお人よしは可愛いと思うのに、獄寺には素直に呆れる骸である。

「ところで、これ、作ってみたかったんですよね」

 チョコソフトを指さす。

「あ? いまどき漫画喫茶とか行けば自分で作れるだろ」
「そうなんですか? とにかくやらせなさい」
「まあ、俺もそれは器用じゃねーからやべーんだよな。お前が作れんなら、お前に任せるぜ」
「ではさっそく」
「おい注文着てないのに作るなよ!」
「いいじゃないですか、これは僕が食べますから!」
「ぐううっ、なんてフリーダムな奴なんだ……」

 獄寺は普段、自分がそういう評価を得ている事に気付いていない。
 何しろ様子を見に来た山本が「お前はそういう奴と交わって普段、お前のまわりにどんな影響を与えているか考えてみた方がいいんじゃねーのかな」などと柔らかな口調で真実を指摘してくるくらいである。

「っつーか……お前も、下手じゃねえか」
「別に器用だとは話していませんよ。こんなもの食べられればいいんです。というか幻覚でうまくできたように見せかけて渡せばいいんです」
「詐欺じゃねーか!」
「お前ら、仲良く働いてるみてーだな」

 そのうち、リボーンが顔を出した。

「感心感心」
「別に仲良くねーよ」
「沢田綱吉へのチェンジを要求する、という点では心は一つですが」
「ツナは忙しいんだ。これからもっともっと忙しくなるしな」

 とリボーンは肩をすくめる。

「その時に、ツナがいなかったら、お前らが全員まとまらねーみたいな話になったら困るんだぞ」
「そ、それは……」
「お前はツナの右腕なんだろ? 獄寺」
「! リボーンさん!!」

 獄寺はじいいいんと感動を覚えた。
 自分をリボーンがそんな風に評価してくれていたなんて!!

「そんなに俺のことを買ってくれてたなんて!」
「ほかの奴がマイペースだったりボス気質だったりして、お前みてーに、こつこつ自分の身を粉にしねーからな・・・・・・」

 本当はリボーンとしては笹川了平がいいんじゃないか、などと思っていた。
 だが彼は獄寺が右腕になりたがっている事を知っているので、軽く話をふってみたら、「それはタコヘッドの夢だろう! 俺は右腕には興味がないしな!」と断ってきた。もちろん、獄寺には内緒である。

「ですよね!!」

 獄寺はいよいよ舞い上がった。

「言っておきますが、守護者の中で一番強いのは僕ですからね」

 ヒバリとの決着はまだつかないままだ。
 そして骸がこのように思っている事を、リボーンも獄寺も初めて耳にして知った。

「そーかよ。自信満々だな」

 うかれているので、獄寺も「ねぼけた事言ってんじゃねえ」などとは言わない。
 右腕として(部下を真っ向から否定するのはよくないかもしれない)と考えていたのであった。

「そうそう、俺の情報によると、最近、並盛町に敵がいるらしーぞ」
「!!」
「ほう・・・・・・面白いですね」

 獄寺は顔に緊張を宿し、骸の方は不敵に笑ってみせる。

「薄汚いマフィアなどこの僕の槍を持ち出すまでもなく幻覚で追い払ってあげてもいいんですよ」

 ふん、と骸は古典的なツンデレポーズ(腕組み)をする。
 女子ではないので胸が盛り上がらないのが玉に傷。
 戦いになって酷いことをするとツナに怒られるが、追い払ったとさりげなくアピールすれば誉めてもらえるのである。
 
「マフィアじゃねーぞ、宇宙人だ」
「なっ・・・・・・」
「何だ冗談ですか、つまりませんね。まあ沢田綱吉に報告するのも億劫ですから別にいいんですけど」

 骸のテンプレート型ツンデレ発言は途中で遮られた。

「大変じゃねーか!!」

 という右腕の叫びによって。

「え?」
「お前、宇宙人つったら宇宙人だぞ! グレイで! ネバダに墜落した宇宙船! アメリカ政府は全てを隠蔽しようとしてるんだ! Xファイル見てねーのかてめーは!」
「は? え?」
「仕方ねえ奴だな、オレの参考書を買してやる。これで勉強しろ」

 バックルームに駆け込んだ獄寺が渡してきた、とんでも雑誌を手にして、骸は思う。
(ああ、そうか・・・・・・彼は・・・・・・犬とフランの間みたいな生き物として解釈すればいいのだ)と。つまり、バカでいかれていると考えた。そして、ツナが心配になった。
 心の中でも(別に沢田綱吉が心配なのではなく、いずれのっとる彼の体が・・・・・・以下省略)と言い訳をしているのでツンデレの鑑だ。

「彼が右腕で大丈夫なんですか?」
「いや、本当なんだぞ。実際にいる。ボンゴレのルーツも宇宙人って話があるくらいだからな」
「信じられませんが・・・・・・本当なのだとしたら、危険なのでは? 沢田綱吉は、三歩歩いただけで、不良に絡まれるでしょう?」
「そうですよリボーンさん! 10代目がアブダクトされて金属片を埋め込まれて、記憶喪失になって、宇宙から帰ってこなくなったらどうするんです!!」
「それと彼、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だぞ、安心しろ。そのうち、ツナが帰ってきて、ここにも顔を出すから、そーしたら意味が分かる」
「「???」」
 
 骸も獄寺も分からなかった。
 が、3時間後、ツナは確かに顔を出した。

「あ、バイト、なんとかなったんだ。よかったー。獄寺君も骸もおつかれさまー」

 そして、そのツナの背後からぶよぶよしたスライムの固まりとしか言えないようなものが、くっついてきているのを見た。

「!!! 沢田綱吉!」
「10代目逃げて下さい!! FBIに連絡だー! いや! ダイナマイトで!!」
「きかなかったらどうするんです、沢田綱吉に当たりますよ!」

 そう言う骸も攻撃しあぐねている。何しろ、体液が酸だったりしたら、ツナに攻撃を仕掛けてしまうことになる。
 相手がどんな生物なのか、輪廻を繰り返しても、ぜんぜん分からない!

「え、何?」

 ツナはふと後ろを振り返る。
 きっと悲鳴をあげるだろうと、骸も獄寺も思ったのだが、ツナの対応は違った。
 突如としてハイパーモード状態になると、それに素早い蹴りをしかけ、後にぶよぶよを掴んで遠くに放り投げたのだ。

「あ、ごめん。で、何?」
「な、何って10代目!! 今のは?」
「いや、わかんないけど、最近、特に多いよね。たぶん、リボーンの修行の何かじゃないかな」
「それで解決なんですか?!」
「お前が現れたあたりから、輪廻とか何? とか深く考えるのやめたからさ」
「さ・・・・・・さすがです10代目!! 10代目は宇宙から来た奴らなんかちょちょいのちょいのスペースマフィアなんすね?!」
「うーん・・・・・・今回の獄寺君、ますます何言ってるんだか、分からないけど、そうかも」
「・・・・・・沢田綱吉・・・・・・」

 さすが全てを受け入れる空だ、と骸は少し感動した。
 そして、自分も(僕の敵はマフィアなのですし、宇宙人に関しては、とりあえず飛びかかってきたら倒す、でいきましょう)と切り捨てたのは、骸もマイペースなのだった。


『完』