た んぺん堂(骸ツナ、ツナ受中心サイト・ムクロウや箱獣が好き)

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SS・ムクロウと一緒の、その後


■ ムクツナ グロツナ(というかグロ様はかわいいものが好きなだけですクローム ちゃんとか)

 
「すみません、ムクロウをいったんおかえしします」

 なんでオレが謝らなきゃいけないのかなと思うんだけど。
 でも、ムクロウに、じゃなかった、骸に謝罪するつもりがないみたいだから、しょうがない。
 獄寺君のあれやそれやこれが、オレの責任になってるのと同じだ。
 それに、オレと骸は一応つきあっているし。

「ごめんなさい、おなかの中に寄生虫もいます」

 それも骸がやったことだ。
 自分のチョコレート趣味でムクロウがむくむく太っていき、オレやクロームに怒られて、選んだ解決方法がこれ。
 あいつの台詞は、寄生虫をおなかに入れればやせますよね。いやそれはそうだけど。
 頭の中はどうなってんだろう。

「そそるぞ! そんな顔をして、そんな趣味があるんだな? ボンゴレ10代目!」
「ありません! どういう趣味?」

 どこがどうそそられるのかわからないけど、オレは名誉のために否定しておいた。
 ハァハァ息が荒くなったグロさんがちょっと怖い。
 
「そうか、つい興奮してしまったではないか。清楚な顔をしたボンゴレ10代目が鳥の尻の穴に寄生虫を……」
「しないで下さい」

 オレは一応目上の人には敬語を使うことにしている。骸はおいておくとして。
 でも、この人はオレが出会ったどんな大人よりも変な人だと思う。
 後半、オレは意思の力で聞かないことにした。
 見透かす力より、このスルーする力、の方がオレの人生に役立っている。

「グロさんだって、ムクロウの中に寄生虫がいると困りますよね」
「確かにな。高貴なムクロウの中に変な虫がいるなど、この私が許さんぞ」

 よし!! グロさんありがとう。
 今、せっかく骸がムクロウからはなれているから、おなかから寄生虫を取り出してほしいんだ。
 そして、できれば、ムクロウをまた返してほしいなって思ってる。

「グロさんがムクロウのもともとの飼い主だし」
「よかろう。やっと私にこの白フクロウを返すことにしたのだな!」
「できれば寄生虫をとったあと、また貸してくれるとありがたいんですけど……」

 というか、これだとほとんどグロさんを利用するようなものだから、オレは、最初から話しておいた。
 クロームは「虫が抜けたら、倒して取り返せばいいよ、ボス」って言ってたけど。
 いやいや、それはさすがにダメだよクローム。

「そそるぞ!!」
「それはいいってことなんでしょうか……」
「かまわんが、そのかわりといっては何だが、こちらの箱も預かってもらうぞ」

 えええ。
 さすがに、そう来るとは思わなかった。





 骸は学校が終わり、オレの家にやってくると、ものすごく、ふくれた。

「僕に黙って騙し打ちみたいなまねを!」

 と言ってそっぽを向く。
 ちらっと横目でオレの反応をうかがっているのが分かるから、何となく最近は慌てない。
 骸は怒ったふりはたくさんするけど、本気で怒ることは少ないんだ。
 イライラしたりもしないし。器が大きいなあ、とも思うけど大きすぎて寄生虫と共存してるのは、ありえない。

「僕から寄生虫はとったんだから、いいじゃないですか」
「ムクロウからはとってなかっただろ」
「なんで、あんな変態と2人で会うんですか。いやまあ変態すぎて、そんなに心配はしてないんですが……いえ、ではなくて、僕のムクロウを……」
「骸、骸、鳥のつもりでやるなよ、怖い」

 骸はふくれながら手をばたばさせている。
 そうなのだ。最近骸ときたら、ムクロウに依存しすぎて、普段の行動が鳥っぽくなっているんだ。
 外見はかっこいいのに、残念だ。
 いや、思考パターンとかいろいろ残念なところは多いんだけど、ふだんは、まあ、かっこよかったのに。

「はっ、ついムクロウなつもりで……」
「な? だからムクロウから離れて日々を過ごした方がいいんだよ」

 オレの説得に骸もしぶしぶな感じで、承知してくれた。

「まあいいですよ、君がそんなにも本来の僕と過ごしたいというのなら」

 とか、余計なひと言がついてた。



 そして、実際に過ごしてみると本来の骸と一緒というのは、けっこう難しかった。
 もう遅かったっていうか。数時間でギブアップ。
 骸は白フクロウとして自分をしっかり認識しているのかもしれない。
 なんかオレにいつも以上にべったりするし、腕を組んできたりとか、する。いや、これは最近、そうだったからまだいいとして。
 並んで歩いてたら、ここがオレの家の近所だというのに、外でオレにキスしようとしたので殴った。

「何するんですか! いつもしてるのに!」

 頬をおさえて叫ぶ。かわいいつもりかー。お前の体は14才にしてはでかい男のものなんだよ。

「そっ、それって、あ、お前が鳥の時だろ! 嘴と唇は違うだろ!」

 もーだめだ。こいつ。
 と思って少し離れて歩く。

「僕が僕になってから、冷たいですね、いつもなら膝の上で抱っこしてくれるのに……なぜ、膝枕をよしとしないんですか?」
「だっ、だから、なんでよしとされると思うんだよ!」

 オレの家にはランボとかイーピンとかフゥ太とかいるし。
 教育上によくないだろ。とか言ったら、廃墟に行こうと誘われた。
 でもなあ、廃墟もなあ。
 千種とか犬とかいても、骸って全然気にしないんだよな。
 オレは気にするんだけど。

「わかりました、ラブホふくはっ」
「自分の年を考えろぉー!」

 とりあえず、こいつがオレとべたべたしたいのは分かった。
 でも、年に似合わずでっかい骸にどこだろうと何だろうとべたべたされるのに、オレはちょっと疲れてるんだよな。なんとかならないかなあ。別にべたべたし なくたって、オレたち一緒にいるじゃん。
 やっぱりムクロウは大事だったかも。必須だったかも。あいつがいるからこそ、オレたちはお互いの欲求を満たせていたのかも。

「やはり、あの体は大事でしたね」

 どろん、と骸が煙を立てて白いフクロウに変化した。
 どうだといわんばかりに胸をはる……おいおい。
 これが幻で、本来は骸がそこで胸を張っているわけで、やっぱり抱きしめる気にはなれない。
 オレは骸を無視して家に入ろうとした。きゅうきゅうやたらとかわいい声で鳴いているのが、怖いな。
 と、玄関の前で気づく。

「そうだ、忘れてたけど、オレ、グロさんから箱を預かってるんだった」
「箱? ああ、もしかしてイカですか?」
「うん、そうだって」

 炎を入れて出してみた。
 もしかして、イカも、中で窮屈かもしれないし。
 
「う、うわあああああ」

 なんだこれ大きい。オレの予想とは違ってるよ?
 水が一緒に出てきて、オレの三十倍はある感じの巨大イカの下半分を覆っている。

「大きいですね。イカというかクラーケンですね。魔物ですね、もはや」

 しゅるん、とイカが水にもぐるように体を縮めた。
 あれ……なんだか、落ちこんだのかな。
 そういえば、グロさんが、シャイでかわいいやつだ、かわいいやつだ、かわいいやつだ、って三回言ってたっけな……。

「ご、ごめんね。驚いて。こんにちは、腕たくさん、あるね」
「………」

 しゅるん、と腕が一本出てきて、オレのさしのべた掌を叩いた。
 わあ、なに、これ。こいつ、ちょっとかわいいじゃないか。

「えへへ、よろしくね」

 ざくっと槍が、グロさんのイカの腕にささった。

「骸?!」
「君に可愛いと思われるのならば、僕はイカにでもなってみせましょう」
「いやいやいや! ちょっ」
「アリベデルチ」

 待てという間もオレに与えずに骸が自分の頭に向けて、憑依弾を発射。
 こいつ本当に人の話を聞かない。

「くっふー!! どうです、このイカとしての僕は!」
「きもちわるい」

 オレの正直な気持ち。
 さっきイカがかわいいなって思ったのは、イカが可愛い感じの心を持っていたからだ。
 けど、骸は気に食わなかったらしい。

「どっ、どこらへんが気持ち悪いというんです! せっかく僕が君のために軟体生物にまで身をやつしてあげたというのに、どこらへんが!」
「いや、全部、かな?」

 やたらいい声で喋る巨大イカは化け物みたいに見えるし……。さっきの愛らしさを返してあげてよ骸。

「君がそういう気なら僕だって容赦してあげませんよ!」
「うっ、うわわわわ、なっ、なにするんだよ!!」

 オレが殺されるーー!! 骸、考えろ!! 人は死ぬの!!
 巨大イカにつかまれて振り回されたりしたら死ぬんだよ! っていうか、きもちわるい!

「うっ、ううううっ……」
「すばらしいですね、この触手! さすがですよグロ・キシニア!」
 
 お前は何を言ってんだこのやろー!! 変態パイナポー! イカ男ー!!
 でもなんかツッコミ入れたらひどい目にあいそうでいえない。

「そうだろうそうだろう、そうだろう!!」

 え、この声はグロさん?
 きもちわるい中で、下を見ると玄関のところにグロさんが両腕を腰にあてて立っていた。
 この人ほど普段着がおかしな感じになる人もいないよなあ、あ、骸もそうか。
 霧の人って全員こんな感じなのかな……あっ、しまったラルも霧だ。言わないでおこう殺されるから。

「すばらしいぞすばらしいぞ、すばらしいぞおおお!! イカが美少年をいじめる! この作戦を思いついた私をほめろほめろ、ほめろぉぉーー!!」
「すばらしいですよ、グロ・キシニア! 君わかっていますね。こうなることをわかっていて、渡したのですね!」
「ほめないーー!! おろしてくださーーーい!!」

 死ぬ気になる時、それは今だって気がものすごくする。
 骸をごきゅっと殴ってやりたい。グロさんも「くははは、いいぞ、最高だぁーー!」とか言っちゃってるので、殴りたい。

「わーーーっ、足に触手が絡んでくる! なっ、ちょっ、どこ、さわろうとしてんだよー!!」

 ちょっと、骸とグロさんが、息が荒いんだけど!! なんなの?!

「誰かたすけてーーー!!」
「……何してる、の?」

 クローム!!

「おお、クローム髑髏……ぐふっ」
「ひいいいいいい!!」

 あわわわわわ、クロームが槍でグロさんの、同じ男として怖くていえないようなところを、さ、刺した!
 どうしよう!! グロさんがルッスーリア2号になっちゃったら!!
 し、死んでないよね?!

「く、クローム、違いますよ、これにはわけがあるんです。君が思いもよらないよーな大人の理由です本当ですよ」
「クローム助けて!」
「イカは……足のうちの一本が性器だっていうけど……」

 ひいいいい、そうなの?! クロームの豆知識が怖いよ!!
 っていうか、槍をかざすのはイカのそれを切ろうとしてんの? やめてあげてー!!
 骸は悪いけどイカは無実だよ!!

「うわああああああ、やめなさい、クローム。痛くないけど痛い気がしますっ」

 骸が本体に戻った。うん、当人に痛みはないけど嫌なんだろうな。
 それは、わかる。

「クロームいいですか、聞きなさ……ごふっ」

 クロームが槍の柄で骸を倒した。腹に決まった。よかったね、その部分で。
 正気に戻ったイカがオレを地面におろしてくれる。
 地面に水滴で、ごめんなさい、って書いてる。

「お前のせいじゃないよ。あっちの変態のせいだよ」
「つ、綱吉君……気遣ってください……」
「やっぱりムクロウの体じゃないと、骸様は……緩和することができないよ、ボス」

 そんなクローム毒物みたいに。まあ、だいぶそうだけど。

「グロさん、だいじょうぶ?」
「くっ、くははははっ、たいした傷ではないっ……こっ、これはこれで満足だ。美少女が躊躇いを含みつつ、敵の急所をつく卑怯な手段で倒し、それをトラウマ とするのも楽しいぞ! 美少年のイカまみれもみれたしなあ!」
「トラウマ、ならない」
「うおおお、クローム再度の攻撃はやめてあげてーー! 死ぬから! ルッスーリア増える! 増えるから!!」



 ちなみにグロさんは約束を守ってくれて、ムクロウは虫下しで虫をとってもらっていました。
 きれいな体でおかえり、ムクロウ。

「僕、また太りますよ?」

 さもオレのせいだといわんばかりに首を傾げてるこの白い鳥。お前が食うのが悪いんだろ。
 まあ月の3分の1くらいは本来の骸とべたべたするのも悪くないんだけどさ……。
 そんなことは言わない。調子に乗りそうだしなあ。

「とりあえず、イカはないからな、骸」
「もうやりませんよ。べっ、別にクロームが怖いからじゃないんですからねっ!」

 じゃあ何でほっそりしてるの、お前。

「でもグロさんもあんなお前と気が合う人だったなんてなー」
「何を言ってるんです!! 外見からしたら、絶対あっちが変態なんです! まったくもって、君は見る目がない!!」
「ああ……見る目とか、そうかも、オレお前、好きだしな」
「い、いきなりなにを言ってるんですか!!」
 
 羽を広げて、あたりをうろうろするムクロウに、オレもちょっと恥ずかしいことを言った気がした。ほめちゃった、ような、さ。


【完】